-醸造責任者が語る「SAKERISE」
SAKERISEの第一弾、「暁光」に相応しい酒米として選んだのが「雪女神」です。
雪女神は、酒米の王様と言われる「山田錦」を超えるためにここ山形県で開発された、大吟醸用の酒米になります。
2021年の鑑評会では、山形県で金賞を取ったお酒のうち、なんと半分が雪女神でした。
(残り半分は山田錦)
山形県が威信をかけて山田錦に挑戦したように、その挑戦によって生まれた酒米は、我々楯の川酒造が新たに挑むプロジェクトであるSAKERISEの第一作目である「暁光」、そして、新しい1日の夜明けのイメージにぴったりだと思い、今までにはないような雪女神の日本酒にしようと決めました。
きれいでスマートな酒質になる特徴のある雪女神。
その醸造設計をするにあたり、年間50本以上、20%以下の高精白を醸造しているという絶対的な経験値と、極力雑味を出さずに仕上げたいという思いから精米歩合18%という高精白に設定しました。
これは、間違いの許されない、繊細かつ緻密な作業が必要になります。

雪女神の特徴
<生育面>
基本的には作りやすい酒米で、背が低く、肥料をあげると収量もグッと上がるのですが、酒米としてアミノ酸は増やしたく無いので、追肥を減らして作ってもらうように依頼しました。形が出羽燦々に比べて細身なので、選別の時に落ちやすくなってしまい、痩せすぎると使えるものが減るので、バランスが非常に難しいとされています。
<酒質>
シャープで綺麗な味わいが出やすいです。アミノ酸が出にくい特徴があり、裏を返せば味の幅が出にくいとも言えます。そのため、スマートなテクスチャーに応じた、強すぎない甘味に仕上げることが多い酒米です。
<2021年の雪女神の特徴>
ここ2~3年は猛暑の影響で硬い米が多かったのですが、2021年は生育が良く、比較的溶けやすくて味のバランスが良く、2021年の雪女神の出来は非常に良いと言えます。
(猛暑だと、硬いが量が取れます。冷夏だと、溶けやすいが量が少なくなります。)
そのため、雪女神が持つ良さをストレートに引き出すことに、とにかく集中しました。

600kg仕込みで、精米歩合18%とすると、玄米は3.3tを要します。当酒蔵は酒米にはとにかくこだわってすべて自社で精米しており、3.3tもの玄米を約2週間という時間をかけて丁寧に米を磨きました。

さらに、味わいとしては香りを出し過ぎない酵母を選択し、香りと味の絶妙のバランスをとることを狙いました。
重厚な甘さや華やかな香りに頼らない、今までにはない酒を目指して、これまでの経験を信じて神経を研ぎ澄ませ、特に温度管理は、0.1℃単位で調整するほど細やかに管理しました。壊れやすく愛おしいものを扱うように、丁寧に、慎重に・・・。

そして、出来上がった暁光を利いてみて、ホッと緊張がほどけるのを感じました。
極めて繊細ながら決して身薄にならず、穏やかで細やかな「心地よい余韻」を持つ暁光が誕生しました。雪女神らしさを最大限に引き出せたと確信しています。

長年の経験を持ってしても、これは自信作!と思っています。日本酒が好きな方はもちろん、ビギナーの方でもぜひ一度味わっていただきたいと思います。
日本酒の新しい時代の始まり、まさに「暁光」、そういう日本酒ができたと自負しています。
<おすすめの飲み方>
まずはそのまま、メロン、マスカットを思わせる優しい香り、きれいでスマートなテクスチャー、
心地よく続く余韻を楽しんでいただきたいと思います。
暁光の味わいの魅力はその「余韻」の良さにありますので、そっと添えるような料理がペアリングに合うと思います。
私のおすすめは、まずは
生ハムいちじく

サーモンとブロッコリーのテリーヌ

また、おすすめのグラスは、スタンダードなものから細めのものを。厚さは薄く、スムースに口に入ってくるものが暁光の魅力より楽しんでいただけます。
温度帯としては、ピンポイントであれば5~8℃、楽しみ方として、5℃から飲み始めて、18℃ぐらいまでの味わいの変化を楽しんでいただくのもオススメです。