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分析士が語る「暁光」

分析士が語る「暁光」

 

-プロが語る「SAKERISE」

SAKERISEでは、造り手の想いを届けると同時に、SAKERISEに関わる様々な分野のプロフェッショナルの視点で、幅広く奥深い日本酒の魅力をみなさまにお届けします。

 

-楯の川酒造 分析士 石田裕磨

2012年に楯の川酒造株式会社へ入社。清酒の一般分析(アルコール・日本酒度・酸度・アミノ酸度)、酵母の培養・麹の力価や汚染度などの分析も行っています。分析結果を見て、それぞれの工程にどの様な調整が必要かを判断する重要な役割を担い、日々お酒と向き合うのが日課です。

 

-分析士が語る「暁光」

今回は、分析士という視点から暁光の魅力をお伝えします。日頃、数値を通してお酒と向き合っている分析士にとって、テイスティングは「答え合わせ」の様なものです。分析値から想像した暁光の姿と、テイスティングから見えた暁光の姿は、どのように異なっていたのでしょうか。

 

-分析士石田が語る「暁光」

暁光の特筆すべき点は「極めて低いアミノ酸度」である。アミノ酸はお酒の味わいを調和する働きを持つ。オレンジジュースを思い浮かべていただければ、「甘さ」と「酸っぱさ」が分離している感覚を想像しやすいだろう。

だが、暁光をテイスティングした時、高い次元での味わいの融合を感じた。なぜこのような仕上がりになったのか。

味わいの要素の中で1つの特徴が突出すると、全体のバランスを崩してしまうことがある。しかし、分析値上の極端なアミノ酸の低さからは想像し得ない味わいの調和が暁光にはあり、非常に興味深かった。

おそらく「香・甘・酸」それぞれが際立った上品さを持ち、アミノ酸に頼らずとも一体感を生み出したのではないかと考える。特に酸の上品さに惹かれる。

数値上、酸度は高くはないが、上品且つ切れが良いと感じる。

 

-頭に浮かんだ「4つの映像」

また、私は暁光のテイスティングの際に、もう1つ特殊な体験をした。

暁光を口に含んだ瞬間、私の頭の中に鮮明に4つの映像が思い浮かんだのだ。日々、多様なお酒をテイスティングしているが初めての体験であった。

その4つの映像を紹介させていただきたい。

 「そよ風になびく稲穂」(上立香) 

「一房のマスカット」(含み香)

「ずんだ」味わい(甘)

「袈裟斬り」味わい(酸)

これら4つの映像が浮かぶと共に、「4つの映像が思い浮かべば映画は完成したようなもの」という某映画監督の言葉が強烈にリンクした。

暁光は、数値では計り知れない様々な上品さを感じる、魅力的な一本に仕上がっている。皆様はどのように感じていただけるだろうか? もしお話し出来る機会があれば嬉しく思う。

分析士が語る暁光、いかがでしたでしょうか。今後もSAKERISEに関わる様々なプロフェッショナルが、独自の視点で魅力を語りますので、ぜひご覧ください。